SSブログ

おやじの琴線を揺らすのは「港の風景」 【尾道風景Ⅱ】 [地域発展]

港の風景9.jpg


尾道。瀬戸内で有数の観光地として人気を博している。観光に訪れるのは女性が多い。女性にとって見どころが多い町なのだろう。昔と今が適度に混在し “オシャレなまち” として心に響いているようだ。女性に限らず、男性にも魅力的な町として存在が高まっている。

それは、アクティブな活動から芸術文化の探訪、そして自然の恵による尾道グルメと郷土料理のコラボ。それに情緒観あふれる瀬戸内風景などあらゆる観光要素がつまっている。とくに女性の心を捉えてやまないのが「猫ちゃん」。狭い坂道に猫の風景が女性の “かわい~” の琴線を響かせている。

観光名所・名物にこと欠かない尾道であるが、おやじの切れかけた琴線を揺らすのが「港の風景」。むかしと変わらない風景にどうも引き寄せられてゆく。思い出に浸ることができる昔のままの風景を、時をへて楽しむのも観光の目玉になるような気もしたが・・・。


港の風景1.jpg

港の風景3.jpg

港の風景2.jpg

港の風景5.jpg

港の風景6.jpg


リポート&写真/ 渡邉雄二

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

山門の「増長天」「広目天」が神呪寺の風格を示す [文化想造塾<社寺>]

神呪寺1.JPG


ご縁があればよく寺社参拝させていただくのだが、残念ながらご縁がつながらない場合は足を踏み入れる機会がない。先日、ご縁に導かれたように、兵庫県西宮市甲山町(かぶとやまちょう)の「神呪寺(かんのうじ)」という寺院に参拝する機会を得た。この寺院は、筆者の家から車で20分程度の、いわゆる地元のお寺さんである。

ご縁をつないでくれたのが、今年5月に開催されたひらりんフェスティバル。会場になった宝塚の平林寺を再興した如一尼さんのお膝もとが神呪寺ということからご縁がつながった。そのご縁を辿り参拝させていただいた。
名前は聞いたことがあるがいまだかつて訪ねたことはない。真言宗御室派の別格本山で由緒ある寺院である。六甲山系の一部にあたる甲山の山麓にあり、通称甲山大師(かぶとやまだいし)とも呼ばれている。寺号の神呪寺は神を呪うという意味ではなく、甲山を “神の山” とする信仰があり、この寺を 「神の寺(かんのじ)」としたことによるといわれている。



神呪寺3.JPG
                  神呪寺山門


訪ねて驚くことに、甲山の中腹にある寺院ということで山岳信仰の深さを感じさせる佇まいである。関心を惹いたいくつかの事象を紹介する。まず今回、目に留まった「山門」。スマホを掲げレンズをのぞき込むと三門の両サイドに仏像が安置されていたのに気づいた。仁王像と思ったが、注視すると仏法の守護神にあたる天部の仏像が安置されていた。山門に向かって右に「増長天(ぞうちょうてん)」、左に「広目天(こんもくてん)」である。山門に安置されているのは金剛力士像が多いが、ここ神呪寺は天部像である。


神呪寺5.jpg
               
神呪寺9.jpg
                天部像「増長天」

神呪寺7.jpg

神呪寺8.jpg
                天部像「広目天」

天部像の中でも四天王とは、「仏様」と「仏法」を悪から守護する最強の神様をいう。また、守護神という性格に加え、仏様だけでは救いきれない衆生(人々等)にご利益を授け救済をしてくれる福徳神という性格も持つ神様ある。その中の増長天は南の方向を、広目天は西の方向を守る役割をもっているといわれている。増長天、広目天ともに眼光鋭く、忿怒相の顔をしている。そして手には武器を持ち、仏法の守護神として山門に安置されているのだろう。


神呪寺10.jpg
                 山門の上部

その姿が見えにくいのは残念であるが、神呪寺の格式高い風格を示している。
新しいご縁で導かれた神呪寺を、資料をひも解きながら紹介してみたいと思っている。

リポート&写真/ 渡邉雄二

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

仏画と般若心経で心と体が整う [仏画曼荼羅アート教室]

般若心経を書くと「心と体」が落ち着く。「心と体」が冷静に穏やかになる。1時間ほどの集中と文字の力なのだろう。それを言葉以外の俗な体験表現でいうなら、サウナ風呂から出て水風呂で体を冷やすときの、あの感覚である。私個人の比喩なので、それぞれが違うことは重々承知である。さらに、サウナと水風呂を繰り返していくと、心も体も不思議と整っていくのである。

仏画曼陀羅アート教室では、前回の課題が大日如来と4菩薩での曼陀羅制作。仏像と般若心経の組み合わせで、中央に大日如来像、周りに観自在菩薩像、普賢菩薩像、文殊師利菩薩像、弥勒菩薩像を配し組み立てるものだった。
大日如来像が中央に配置され、その前に276文字の般若心経を扉のように書き添える。般若心経の奥に大日如来像が経典に包まれるかのように安置されたイメージとして表現されている。


箕面1.jpg
               大日如来と4菩薩での曼陀羅制作

それを各教室の皆さんがチャレンジし仕上げたものを並べた。今回の課題で、新しい発見があった。大きな作品なので、般若心経も当然大きく書くことになる。見本を見ながらで一文字一文字丁寧に思いを込め書いているのが一目瞭然である。家で仕上げた方たちのも、絵にも文字にも力がみなぎっている。一歩、また前進した。心と体が整い書かれた作品に仕上がっていた。


池田.jpg

IMG_3348.jpg

IMG_3345.jpg

箕面4.jpg

IMG_4818.jpg

紙上曼陀羅3.jpg

仏画神戸3+1.jpg

仏画神戸4.jpg

箕面2.jpg

IMG_3808.jpg


リポート&写真/ 渡邉雄二 制作/ 仏画曼陀羅アート教室の皆さん

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

仏教音楽も加わり “鎮魂”と“感謝”を込め開催された「レクイエム音楽祭」 [雑感]

レクイエム1+ (2).jpg


新型コロナウィルス感染症により、尊い命を失われた方々に対し慰霊のための鎮魂と、命の危険を顧みず医療に献身的に携わっている方々を労い感謝を捧げる「レクイエム音楽祭」が6月12日に、池田くれはロータリークラブ(服部潤承会長<佛日寺住職>)の主催で、池田市民文化会館アゼリアホールで行われた。

このような音楽祭は今回が初めて。同クラブが各方面に声をかけ6団体の賛同で実現した。その中に、一般では見るチャンスが少ない僧侶による「声明(しょうみょう)」や「梵唄(ぼんばい)」が慰霊の鎮魂と感謝の意を込め唱えられ、会場に響きわたった。


レクイエム2+.jpg
                      梵唄


「声明」とか「梵唄」は一般の我々には馴染がないが、分かりやすく簡単に言うなら仏典に節をつけた仏教音楽のことをいう。同音楽祭では池田市の真言宗久安寺が「声明」を、そして佛日寺が「梵唄」で出演。
声明は、真言宗に伝わるもので、今回はその中の一つである「散華(さんげ)」で仏を讃え、花を散らし供養した。古くは蓮の花びらを散らしたが、現在では花弁形の紙製が用いられている。今回は、同音楽祭を「鎮魂」と「生きる」という強い思いを込め散華された。


梵唄は、隠元禅師によって伝えられた、黄檗宗独自の声明である。中国明代の唐韻で発音し、経典を唱えるときに鳴らす梵音具である鏧子(けいす)や木魚(もくぎょ)、大引鏧(おおいんきん)、小引鏧(こいんきん)、香灯(ひゃんてん)、鐃鈸(にょうはち)などの鳴り物法具でリズムとって読誦する。
前半は、亡くなられた方々が成仏されることを願い三宝讃を、そして後半は、仏様がこの世で苦しんでいる人々を救うため西方讃という内容の梵唄を披ろう。



レクイエム3+.jpg

レクイエム4+.jpg
梵音具である鏧子(けいす)や木魚(もくぎょ)、大引鏧(おおいんきん)、小引鏧(こいんきん)、香灯(ひゃんてん)、鐃鈸(にょうはち)などの鳴り物法具でリズムとって読誦


米山奨学生学友や女声合唱の皆さん、そして高校生による吹奏楽や子供たちの合掌に仏教音楽が加わり、いままでにない音楽祭として、新型コロナウィルス感染がいまも続く中で大きな感動を与えた。


レクイエム5+.jpg
服部潤承師(池田くれはロータリークラブ会長・佛日寺住職)

レクイエム6+.jpg
梵唄で参加された僧侶の皆さん


リポート/ 渡邉雄二 写真/ 黄檗宗佛日寺

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

大林宣彦監督らが築いた礎、未来ある「尾道映画祭」 [尾道映画祭]

「ふたり」を見終わったとき、会場から大きな拍手がおこった。映画のあとに拍手が鳴る光景はそんなにあるわけではない。今回の「尾道映画祭」という舞台の最後の上映作品に対して惜しみない拍手が会場に鳴り響いた。
会場内の客席で観ていた、故大林宣彦監督の奥様で映画プロデューサーの大林恭子さんや娘さんの大林千茱萸さん、そして「ふたり」に主演した石田ひかりさんたちに対しての労いと感謝を込めての拍手だったように思う。そう思いながらも、2年前に亡くなった、尾道出身の映像の魔術師ともいわれた、同作品を監督した大林宣彦監督への “哀悼の意” がお客様の拍手に込められていたようにも聞こえた。


尾道映画祭1.JPG


私は、「ふたり」を見るのは初めてで、こういった機会に尾道で見られるのは心高ぶるものがあった。全編が尾道ロケというこの作品が、32年の時を経て、尾道映画祭で公開されたのは感慨深いものだった。
ちょっぴりドジな14歳の実加(石田ひかりさん)としっかりものの姉・千津子(中嶋朋子さん)の姉妹が繰り広げるストーリー。ある時に、不慮の事故で亡くなってしまった姉が、幽霊になって現れ実加を励まし苦境を乗り越え成長していく姿を描いたもの。赤川次郎の同名原作をもとに大林監督が映画化した作品である。

大林監督は、尾道を舞台にした「転校生」を皮切りに「時をかける少女」、「さびしんぼう」を世に送り出し、のちにこれらが尾道三部作といわれるようになった。
そして、1991年に、再び尾道ロケでこの「ふたり」を撮り。続いて4年間隔で「あした」と「あの、夏の日」を撮り、新尾道三部作として尾道シリーズを製作した。


尾道ひかり3.jpg


小津安二郎監督の「東京物語」で “映画の街・尾道” の足掛かりをつくり、大林宣彦監督が映画の街の基礎を固めた。尾道から発信できる「映画」は次の世代の作家やクリエーターがどのように尾道とかかわり発信していくかが未来を創ることに。いまから楽しみである、何を見せてくれるのか。

余談話であるが、今回も、客席から遠目であるが舞台の石田ひかりさんを拝見した。20年ほど前にも、犬と散歩している石田さんを遠目から見たことを思い出した。ご主人がまだ大阪勤務のころ、西宮に住んでおられたことからそういう偶然があった。私も犬と散歩中で、たしか犬種が一緒だったことを記憶している。だから、なんだ! ということではあるが、私の拍手は石田さんへの応援の気持ちを込めて!


尾道ひかり1.jpg


リポート&写真/ 渡邉雄二・尾道映画祭実行委員会

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

ほそ路 【尾道のまちかどシリーズⅠ】 [地域発展]

JR尾道駅前の南側に、東へ約1.2㌔つづく尾道本通り商店街。
100年を超える老舗のお店に、
若者たちの情報発信基地のような現代感覚のユニークなお店などが混在する。

この本通り商店街の北側は国道2号線、
そして国道に沿ってJR山陽本線が走っている。
その北が千光寺山。南側に目を向けると海。
山と海の狭い間に店舗や住宅がひしめきあっている。
東西に走る国道、本通り、海岸通りに対し南北を行き来するのは細い路地。
その路地裏を歩いてみた。


細道14.jpg

細道12 (2).jpg

細道8 (2).jpg

細道7 (2).jpg

細道6 (2).jpg

細道5 (2).jpg

細道2 (2).jpg

細道9 (2).jpg

リポート&写真/ 渡邉雄二


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

尾道映画祭の「未来」は、尾道を愛する人たちのエネルギーでつくられる [尾道映画祭]

今回初めて「尾道映画祭」に参加し、上映された一部の作品を鑑賞。今年は10作品が上映され、「作家と尾道、そして未来」というテーマで開催された。尾道を愛する、多くの映画ファンに支えられた映画祭という印象だった。


尾道映画祭1.JPG
映画祭最後の上映、故大林宣彦監督作品「ふたり」のあとのフィナーレ

18日のオープニングセレモニーのあと、「空母いぶき」が上映映画の先陣をきった。小学館「ビックコミック」に連載中の漫画を映画化した大作である。原作者であるかわぐちかいじさんが終了後、ゲストで登壇された。同氏は尾道(向島)出身の日本を代表する漫画家のひとりであり、多くのヒット作を世に出しているクリエーターである。
そのかわぐち氏の、パンフレットの表紙のコメントに、「尾道のまちは、2次元ではなく3次元のまち」と書いている。3次元は立体的な世界ともいい、自分の生活を客観視できる空間だ、と表現している。この言葉を読んだとき、まさに! と。漫画の世界観ならではの言葉のように感じた。さらに、立体的な3次元の空間を持ったまち、尾道で育った経験は大きく自分の感性に影響を受けているという。
残念ながら時間の都合で、同氏の “生きざま” を生の言葉で聞くことはできなかった。


尾道映画祭7 (2).jpg


しまなみ交流館での午後からの上映は、「さがす」。この作品は初めて見るので楽しみだった。
片山慎三監督の商業映画デビュー作である。大阪出身の片山監督が大阪・西成界隈をロケ地に選び、商業性を意識しながらも社会性の強いテーマに取り組んだ作品。どういう展開になるのかな? と思わせながら、また最後で、これ、どういうこと? と考えさせられる結末になっていた。
シリアスな作品でありながらコミカルなシーンもふんだんに表現されていた。片山監督が主演に選んだ俳優が佐藤二郎さん。映画・テレビドラマ・演劇・バラエティ番組、さらには映画監督に至るまで、幅広い活躍を続ける佐藤さんが、監督からの熱望に応えたようだ。底知れない凄みと可笑しみを表現する演技はまさに佐藤さんの真骨頂、それを見せてもらった。


尾道映画祭6 (2).jpg


映画終了後のトークショーに、主演を務めた佐藤さんが登壇。初めての尾道ということもありどことなく嬉しそうに振舞っていた。トークショーが始まるまでの舞台準備にピアノをスタッフに交じり押して現れた。このあたりの顔だしも佐藤さんのバラエティ性豊かな現れかも。ちょっと可笑しみのファンサービスだったように推察した。
トークショーは、佐藤さんからの要望で、お客さんからの質問に答える形式で展開された。

進行役の方と冗談を交えながら、お客さんの質問をうける。はじめはこれでトークショーになるのかと不安だったが、ふたをあけたらびっくり。事前の筋書きと思わせる質問内容に驚いた。映画のワンシーンのことや、細かなそのシーンの状況を見ての感想を語りながら質問する。10人以上のファンからの質問に真摯に応える佐藤さんの人間性や役者魂が感じられ、参加されたお客さんは満足されたように見えた。


尾道映画祭2.jpg


今回のように、映画祭という名がつくと、多くの映画人の生の声が聞ける。映画の見どころ、撮影の裏話、監督さんの映画への想いなどで映画の楽しさが何倍にも膨れ上がる。また、来年の尾道映画祭が楽しみになってくる。

リポート&写真/ 渡邉雄二・尾道映画祭実行委員会

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

いまも変わらぬ渡船の灯り [地域発展]

尾道10 (2).jpg


「尾道映画祭2022」が17日から3日間開催された。今回、映画祭にあわせ尾道を訪れている。尾道を訪れた際は、私の中ではこの光景なしで尾道紀行は始まらないという変な観念が頭にこびりついている。尾道から目の前の向島にわたる交通機関である「渡船」のある風景。半世紀以上も前に通学で使っていた渡船が、私の尾道への郷愁ストーリーの根幹をなしているといっても過言ではない。歳を重ねるごとに根っこがどんどん太くなっていく。

今回、まずは尾道駅に着いての第一歩が、渡船に乗ることだった。着いてそそくさと桟橋にむかい渡船の到着を待った。7、8分の乗船時間ではあるが向島に渡った。そして向島の桟橋の風景を撮影し帰りの船を待った。これで満足なのである。
夕方からの映画鑑賞を終え、会場を出たときはすでに陽が沈ずみ空も海も藍色に染まっていた。その夕暮れに灯を照らしすすむ渡船は、海に浮かぶ火垂のように見えた。「海・空・山」が織りなす瀬戸内・尾道ならではの景色が広がっていた。


尾道9 (2).jpg

尾道7 (2).jpg

尾道5 (2).jpg

尾道3 (2).jpg

尾道2 (2).jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

こんな専門学校は、京都祇園ならでは [伝統文化]

京都・花見小路を歩くといつも見に留まるのが「八坂女紅場学園(やさかにょこうばがくえん)」の掲示板。ある飲食店の玄関先に掲出されているが、通るたびについつい見てしまう。とくに学園や学校に関係しているわけでもないのに。
その掲示板は学園が経営する祇園女子技芸学校の今月の稽古日のお知らせである。関係者以外にはまったく不要な掲示板だけど、なぜか目に付くように花見小路通り沿いに誰にも見えるように掲出されている。


祇園1.JPG
           祇園女子技芸学校祇園甲部歌舞練場内にある


この祇園女子技芸学校は、京都市東山区祇園町南側の祇園甲部歌舞練場の中に併設されている教育機関である。いま風にいうなら芸・舞妓さんのための専門学校のようなもの。同校の必須科目は舞(井上流)・鳴物・茶道・三味線。そして能楽・長唄・一中節・常磐津・清元・地歌・浄瑠璃・小唄・笛・華道・書道・絵画など、座敷芸事には欠かせないもの身につけるため多岐にわたる。生徒は祇園の芸・舞妓さんの全員で、年齢は15歳から80過ぎまでと幅広い。


祇園4 (2).jpg
     花見小路通りに掲げられている祇園女子技芸学校の稽古スケジュールボード


花見小路の表通りの掲示板には、科目、教授名の札が掛けられ、日程は白墨で書かれている。掲げられている理由は、芸・舞妓さんへのお知らせというのもあるだろうが、想像の域であるが芸・舞妓さんにしっかりと科目ごとに芸事を教えている、というアピールなのだろう。
掲示板の中で、目が留まるのが「教授」の方々の名前。舞踊科のトップには人間国宝の井上八千代さんの稽古日程がある。それも一番多いスケジュールになっている。
また、能楽科では片山九郎右衛門さんもスケジュールが書かれてある。そして各科目も超一流の指導陣が名を連ねる。こんな方々が先生というのは、やはり祇園ならではの格式なのだろう、また京都花街としてのプライドなのかもしれない。


祇園2.JPG


時代が変わっても、京都祇園の風土は変わらない。むかしの慣習がしっかりといまに伝えられている。その祇園の厳しい世界に挑戦する若い娘さんたちも増えてきているという。女性の「なりたい職業」、「憧れの職業」に一歩ずつ近づいているような気がする。祇園花街の世界が、見通し風通しがよくなってきたからなのだろうか。


IMG_2655.JPG
                稽古に通う舞妓さん


リポート&写真/ 渡邉雄二

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

墨がひろげる「黒と白」のファンタジー 【美の壷より】 [伝統文化]

IMG_5079.jpg


墨の色はつややかな黒というイメージがある。墨に造詣が深いわけでもないので、よくはわからないが色で表すなら「漆黒」ということなのだろうか。

先日のNHKbsプレミアムの番組「美の壷」を観ていると、墨は黒色だけではなく紙に載せていくと青紫に微妙に変化していくようだ。微妙な違いはなかなか読み取れないが、専門家がいうのだから間違いないのだろう。

墨は、絵でも文字でも白地のものに黒をのせて表現する。「白と黒の世界」を創る材料として日本の精神文化の中で深くかかわり貴重な存在として伝わっている。その墨づくりをしている堀池雅夫さんが美の壷で紹介されていた。堀池さんはフェイスブックの中では独特のタッチで可愛らしい絵(彩色)を描いておられる水墨画家である。が、本業は江戸時代以降途絶えた松煙を復活させた、日本で唯一の松煙煤(しょうえんすす)職人。
和歌山県田辺市に「紀州松煙」工房を構え、江戸時代より紀州に伝えられてきた障子焚方式で松煙を採煙している。原材料として樹脂分の多い赤松材を使用し、伝統的工法を守りながら採煙。純松煙(松煙100%)で製墨までを行っている。


IMG_5072.jpg

IMG_5073.jpg
                    赤松の薪

IMG_5075.jpg
               障子焚方式で松煙を採煙

IMG_5083.jpg
             日本唯一の松煙墨職人の堀池雅夫さん

固形墨は、煤(すす)と膠(にかわ)に少量の香料などを加えて練和し木型に入れて乾燥させたもの 。それを硯で水とともに磨って適度な粘りの墨にする。この磨っている時間がたまらなく精神的な高揚につながるという。筆にたっぷり吸わせた墨を白の下地にのせていく。そして「黒と白の世界」が生まれ、墨ならではの想像の領域がつくられていく。


IMG_5080.jpg

IMG_5063.jpg



その墨を使う表現者として書家の紫舟さんと、水墨画家の大竹卓民さんが紹介されていた。
さらに、前回紹介した長谷川等伯(安土桃山時代の画家)の松林図屏風と玉澗(ぎょくかん/中国南宋末の画僧)などの「黒と白の世界」を描いた絵も紹介。ともに余白が多い絵であり、その中からいろんな想像が広がっていく。墨が広げるファンタジーの世界を楽しませてもらった。


IMG_5060.jpg
                 書家の紫舟

IMG_5064.jpg
              水墨画家の大竹卓民さん

IMG_5066.jpg

IMG_5085.jpg
               中国南宋末の画僧 玉澗


リポート/ 渡邉雄二 松煙墨についてはウィキペディアを参照 画像はNHKbsプレミアム映像を複写し転載

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー