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京の涼やかなおもてなし 袋中菴の「幻の花写真集-夏シリーズ」 [袋中菴「幻の花」]

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31日、京都八坂神社で、鳥居に大茅輪を設け、参拝者はこれをくぐって厄気を祓い、また「蘇民将来来之子孫也」の護符を授かる「疫神社夏越祭」の行事をもって今年の祇園祭は幕を下ろす。3年ぶりに復活した山鉾巡行で夏の京の街は盛り上がった。
京のまつりにかぎらず、これからは盂蘭盆会(うらぼんえ)が各地で行われる。
京都・袋中菴の「幻の花写真集より」で紹介した挿花は今回で最後になる。何回かに分けて、秋の花からスタートし、今回の夏の花々で締めくくる。その最後に登場するのが、盛夏を彩る涼しげな花々と、その設え。楽しんでいただければ幸である。

まず、最初の一瓶は「囃し花」。すだれの前に飾られた祇園祭の山鉾の横に、レースガラスコンポートに虎の尾、葉蘭、そしてブルーファンタジーが暑気祓いを兼ね祭りの原点である神仏への供養に、と飾られた。
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「円相の花」。夕方、円窓に吊ってある花が揺れている。外は涼やかな山からの風が吹いているのだろう。円窓に照らされ蔓桔梗(つるききょう)が仏像に見えてくる。
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夏の盛りに、森羅万象のすべてに宛てた、夏に生かされている自身を流し帯に見立てた文のようにも見える。「心尽くし花」。
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夏の涼感を味わうのは花そのモノを生けるだけでなく、花器やちょっとしたモノを使い、より涼しげに見せるのもステキ。「露の花」と称し、ガラス皿にのせた花の上にガーゼ、それに冷たい水をかけてみると妙な涼しさが楽しめる。
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「来駕の花」として、庭先の日陰に置いた桶に入れた花が来訪した人を迎える。迎える人の心涼やかなおもてなしいである。五月梅と楓に、桶が見事に組み合わさり涼感をそそる。
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「祇園まつり」。祇園祭に欠かせぬ神や御霊に捧げる花、檜扇(ひおうぎ)。中蕪立華瓶と檜扇、撫子の組み合わせが絶妙な形状をなし涼やかさをかもし出している。
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平成九年に世界文化社から発刊された、袋中菴 山階御流 六世家元である賀幡圓定師が「袋中菴 幻の花」の写真集のために、京の四季折々の季節や行事にあわせ生けられた。花々をとおし命あるモノすべてに向け深き祈りを捧げられた。すべての写真は紹介できなかったが、一部を切り取り披ろうさせていただいた。
猛暑が続く折、また新型コロナウィルス感染拡大のさなか、私の師である圓定師の力を借りて乗り越えたいと思いで綴ってみた。お時間があればご一読いただければ嬉しいかぎりである。

渡邉雄二 拝

リポート&写真/ 渡邉雄二 写真/ 袋中菴 幻の花の写真集を複写転載 文/ 圓定師の写真集解説文を参照

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夏の茂り 第三小節「七夕-乞巧奠」 【袋中菴 幻の花写真集より】 [袋中菴「幻の花」]

明後日は七夕。幼少期の行事では欠かせない楽しみ。短冊に願いを込めて笹に吊り下げる。そんな光景が幼稚園・保育園ではいまもよく見られる。

七夕は、もともと中国の伝説がストーリー化された乞巧奠(きっこうでん/行事)だといわれている。この行事は7月7日に、はた織りが上手な織姫にあやかって、「はた織りや裁縫が上手になりますように」と祈願する風習から生まれたもの。また、男の仕事である農耕の象徴である牽牛の男女が一対で神格化され後世に伝承されてきた。それが星座にも反映されたといわれている。

真夏の風物詩である七夕(乞巧奠)が「袋中菴 幻の花写真集」の中に掲載されている。その七夕を "夏の茂り第三小節"として「乞巧奠」と「畳の花」、そして「夏の夕」の三作品について写真集解説文を参照に紹介する。

まず「乞巧奠」
七夕は7月5日の午後から棚を作り始める。青竹に五色の糸と梶の葉を吊るし、棚の中央に流した帯ひと筋の上に瓶子一対を、そして茄子や瓜などの旬のものを供え、鼓や雛琴、笙などを飾る。華やかな夏に涼やかな風情を感じる乞巧奠の飾り

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畳の花
畳を滑る一陣の風。少しの涼感が心地よさを感じさせる。盆は形、質、塗り、色と多彩。これを水盤として敷板花台に見立てるのは山階御流の定法。真紅の鶏頭、紫の龍胆(りんどう)が薄(ススキ)の葉の裾で生き生きと映える

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夏の夕
夏の打水は涼感をそそる。さりげなく生けられた花もまた、心の打水のような爽快感を見る者にあたえる。井戸の周りならなおさら。笊の中で、黄色のルドベキアとピックの松明草、紫の龍胆のそばで、硝子鉢に深紅のバラ一輪が映える

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リポート/ 渡邉雄二 写真/ 袋中菴 幻の花写真集より複写転載 解説/ 袋中菴 幻の花写真集を参照 花匠/ 賀幡圓定師(袋中菴 山階御流六世家元)

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夏の茂り 第二小節 「花で人の心が生かされる」【袋中菴幻の花 写真集】 [袋中菴「幻の花」]

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「袋中菴 幻の花」シリーズで夏の茂りの第二小節では “迎え花”、“便り花”、“神に捧げる花”などを紹介する。
ここに記載している写真や解説文は、「幻の花写真集」でまとめられたものを参照し掲載していることをあらかじめご了承いただきお読みください。

日本の暮らしに根付く「おもてなし」は、日本文化から生まれた独特のお迎えのマナーとして伝わっている。お客様をお迎えする表現方法は言葉以外にもいくつかある。そのひとつが「花」である。季節の花や、花を入れる花器、そして花や花器の色彩で迎えることにより、迎える人の人柄が出て楽しい。そんな細やかなお迎えが「日本文化の原点」のような気がする。

一生に何度も会えないかもしれない、と思うと人を迎える気持ちが改まる。この一瞬のときを迎えるために装う花がある。
また、何気のない日常のなかに華を一輪置くことで、心に物質以外の別の感情が生まれてくるから不思議だ。手紙を入れておく文箱の横に花が一輪添えられていると、なかの手紙の内容が偲ばれる。まさに偲ぶ花になる。

花も命あるもの。言葉はないが美しい形や色、そして香がある。それを生かすのは人であるが、花によって人の心が生かされていることを忘れてはなるまい。


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百合流し帯 白い百合の流し帯で涼感を視覚的に表現された待合の花

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桜桃に可愛らしいがく紫陽花の可憐さが漂う

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一期一会と思いながら人を迎える。その一瞬の花として装う

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何気ない日常に一輪添えると形からでは見えないものが浮かぶ

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花と花がつなぎあって花を咲かす。人もそうでありたい

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もうすぐ葵まつり。ひそかに神に捧げる葵


リポート&写真/ 渡邉雄二 写真/ 写真集複写し転載 参照・転載/ 「袋中菴 幻の花」写真集

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

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夏の茂り 第一小節「端午の節句」 【袋中菴 幻の花 写真集】 [袋中菴「幻の花」]

“秋に色づき実り”からスタートし、一年の暦に移ろう花々が紹介されている袋中菴の「幻の花」シリーズは最終章である “夏に茂り“を迎えた。この夏に茂りは三小節に分けて紹介させていただく。

初夏の祝いごとである「端午の節句」にまつわる花が中心になる。
まず端午の節句の脇床飾りでは、男の子の健やかな成長を祈って、木馬を中心に姫菖蒲が左右にすっきりと生けあげてある。現代的な感覚でアレンジされてある。

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                     脇床飾り


つづいて、端午の節句折形。虎の如く雄々しくあれと願いながらも、いずれの日か出会う撫子は花を添わせ。折り形は、折り目をひと筋くっきりと引き男の子らしさをあらわす。
花は瑠璃虎の尾に撫子とマトリカリア。

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                   端午の節句の折形


これは「封じ花」。暖かくなると、うきうきしてくる。子どもたちがかくれんぼするかの如くガラスケースで椿を一輪とじこめ、春の陽気にすこしいたずらするのも一興。
花は椿 唐子 都忘れ

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                     封じ花


初夏の「祝い花」。杜若は菖蒲とともに、初夏を代表する花。端午の節句の頃は、まだ葉もひ弱く陽射しが透けて見える葉もある。三体にして水際をすっきり轡(くつわ)止めし、桶に生けるのも野趣味である。

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                     祝い花


夏の茂りの第一小節の終わりは「風光る花」。
五月に入ると、緑も生き生きとしてくる。そんな若葉一色の中に、朱塗りの鉢を置くだけで自然の美しさに磨きがかかる。
花は菖蒲の葉 つくも ニューギニアインパチェンス

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                     風光る花

袋中菴「幻の花」シリーズの最終章の第一小節として「端午の節句」にまつわる花を写真集の中からピックアップした。花は季節や催事をあらわす。袋中菴に伝わる挿花「山階御流」の奥義なるものが花を通し見えてくるようである。

リポート&写真/ 渡邉雄二 写真集/ 袋中菴 幻の花

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冬におさまる「輝く花や木」 【袋中菴「幻の花」Ⅱ】 [袋中菴「幻の花」]

袋中菴に伝わる「幻の花」の写真集から紐といていくなかで-。
前回の「秋に色づき実り」に続いて、今回は「冬におさまる」花々を紹介する。
冬におさまる花は、やはり「正月」。正月花として飾られるいくつかをピックアップしてみた。
メインは床の間で一年のはじまりを祝う「若松」。それぞれの寸筒に一本の若松を入れ末広の折形に紅白の水引で根締めして捧げる。一つに椿が、もう一つに千両が添えられる。これらの若松の飾りが天地人の世界を映しだしているかのよう。一年の幸せをこの一本で表している。

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そして、袋中菴の正月床飾りでは床の間に軸が掛けられ、三具足として中央に香炉、右に燭台、そして左に寸筒の若松が揃う。この写真の軸は、原在中筆の双幅日月梅林図が掛けられてある。そして脇床には鏡餅、一方には邪気を祓う寿の卯杖(うずえ)が飾られてある。袋中菴の正月飾りの披露目である。

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床の間ではないが、冬は花の数が少なく寂しい季節。その時節に節分まで花のない枝に華袋香をかけて楽しむという。床飾りにするのであれば、香炉ははずし飾る。

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これは、凍る花(残菊)と名がつけられている。真冬に凍った水たまりの中に陽がさすに伴い、氷の中から輝き生きている菊をイメージしたもの。

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最後に、とっても可愛らしい「雪兎」。庭に初雪が積もった朝に、ひとかたまりの雪で兎を作った。それに花飾りをつけてあげると、兎が喜んでいるように見えた。(山階御流家元・賀幡圓定師の言葉)

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この季節、花は少ない。冬におさまる花や木は正月飾りに使われる。数少ない中で袋中菴の「幻の花」として表現された花々の美しさは輝きを放つ。花や木も命あるもの、いつでも、どんなときでも輝いているのを忘れてはならない。そんな花をこの一冊から・・・。

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