SSブログ

春宵一刻値千金 [文化想造塾<易社/煎茶>]

「春」を表わす季語は、数えきれないほどある。花や動物など自然界のものが多い。春、と言えば誰もが思うのが"桜"。桜によく似た"杏"も春の季語としてよく使われる。

春を象徴するもので珍しいものがいくつかある。代表例が「牛」、そして「ブランコ」もそう。牛は、春の農耕に欠かせない動物。牛と言えば、春。あまり馴染みがないかも知れない。ブランコは、もっとピンとこない。

ブランコは、もともと中国の異民族が好んだ遊びのようである。ブランコ遊びが春の寒食節の時期に行われていたことに基づくものらしい。だから、ブランコと言えば、春をイメージさせる。

今週の煎茶の勉強会で、以上のようなことを掛け軸(写真)を通して教えていただいた。

CA3F14410001.jpg
この牛の絵を見て、季節は、時間は、情景は、なにをしているところ? というクエッションが先生から投げかけられる。茶席で、よく牛の軸がかけてあるのを見かける。茶席で見れば、もしかして「十牛図」と思うかも知れない。

牧童が牛を探し捕らえるまでの過程を描く十牛図は、代表的な禅宗的画題のひとつで、牛は、心理、本来の自己、仏教における悟りを象徴している。牛を得ようとする十牛図は、すなわち本来の自己を探し求める旅、悟りへの道程である。

先生は、そんな堅い話ではなく、夕暮れ時に、牧童が牛に乗って家に帰るところですよ、といった。のどかな情景を想像するでしょ、と。
うん、確かに。牛もひと仕事を終え、どことなしに微笑んでいるように見える。

この絵は、"理想の世界"を描いている。儒教が望むところは、のんびりと豊かな社会を作ることにある。その象徴が、この絵で表現されている。

そんな絵を見ながらいただく玉露の味は、また格別なものである。

CA3F14420001.jpg
中国で有名な漢詩を、稽古の最後に唱和した。杜牧の「清明」ある。

清明時節雨紛々  

路上行人欲断魂  

借問酒家何処有  

牧童遥指杏花村

清明は春分の日から十五日目、花の季節であるが、雨が多い。清明の時節に、しきりに降る雨。雨の降りしきる道を、ひとりの旅人がゆく。ただひとり旅ゆく人の胸は、かえってさみしさにしめつけられる。
せめてこのさみしさを酒にまぎらわそうと、借問す、ちょっとたずねてみる。居酒屋はどのあたりにあるのかね。牛の背にまたがった牧童は、黙ったままゆっくりと指さした。それは杏の花咲くかなたの村だった。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0