SSブログ
文化想造塾【逸品殿堂】 ブログトップ
前の10件 | -

自然の光で見る、墨色の若冲。  [文化想造塾【逸品殿堂】]

数年前に、京都 宝蔵寺所蔵の伊藤若冲の「竹に雄鷄図」や長沢芦雪の「拾得図」、鶴亭浄光の「墨蘭図」などの作品を鑑賞する特別講座が、京都市所有の、第3代、9代の総理大臣を歴任した山縣有朋の別荘「無鄰菴」で行われた。

無鄰菴.jpeg

通常、伊藤若冲の絵を鑑賞するとなれば、博物館あるいは美術館がほとんど。蛍光灯などの灯りに照らされている場合が多い中で、その時の講座は、テーマが「日本の絵画を知るー"自然の光で見る若冲"」だった。それに惹かれ参加した。

床の間に掛けられていたお軸は紅葉の絵。この絵を蛍光灯で見るのと、自然の光の中で見るのと明暗の違いが素人でもはっきりと理解できた。

続いて本題の若冲の「竹に雄鶏図」を、今回の講座解説をしていただいた福田美術館学芸課長(当時/嵯峨嵐山日本美術研究所)の岡田秀之氏が、「3年前にこの作品が若冲筆のものであると認定されて以来、表具を一式新しいものにし、その初披露となります」と前置きし掛けられた。
若冲が得意としている鶏の中でも、この絵は墨のみで描かれたもの。描き方などを詳しく解説され、とくに尾羽根など墨がどのくらい滲むかという計算をした上で描いている、というのがこの絵の最大のポイントという。

岡田5.jpeg

岡田7.JPG

その絵が、自然の光の中でどのように見えるかを楽しむのが今回の主旨。自然の光の中では明暗がよくわかる。それによって鶏の動きが見えてくるよう。
実際、若冲が描いたときは、ランプの灯りか自然光の中である。その灯りの中で墨の濃薄をつけて描いたものだからこそ、自然光で観るのがベストのように思う。若冲の墨色にこだわる想いが伝わってくるようだった。
絵の解説以外にも、表具や保存の仕方など多義にわたる解説も興味深い内容だった。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

卓越した能の演技力。 “観る力” が求められる。 [文化想造塾【逸品殿堂】]

半年ぶりに取材活動を開始した。自粛期間が長引き、取材内容やスケジュールなどが思うように調整ができなくなり、久しぶりの再始動になった。今回の取材は、ある企業の「YouTubeチャンネル」を開設し日本の伝統文化に関する動画を制作している。
その動画を国内はもちろん、海外に向けて発信することを計画している。それは、日本の伝統文化を海外で観ていただくチャンスを増やし、それを後々英語で伝える内容にしていくことを検討している。
その第一弾として、能楽師 林本大氏による「能楽」を紹介する。

その取材を開始した。動画撮影の合間を縫って見聞きしたことを拾ってみた。
能というのは、必要最低限の舞台装置しか用いない演劇である。使う主なものとしては「面(おもて)」、「扇(おうぎ)」、「装束(しょうぞく)」のみ。そして能は「舞」、「謡」、「囃子」だけで成り立っている。これだけで演者はそれぞれの物語を表現していく。つまり演者は高い演技力(技能)が必要とされるわけである。
となると、観る側の “観る力” が求められる。演じる側は、観る側に寄り添い解りやすいようにストリーや舞をアレンジすることは一切ない。いうなれば、観る側にその知識や理解力を強いるのである。「伝統」を一切崩さず演じるのが「能」、だから面白い(深い)と思える芸能として今も生き残っているのだと改めてその存在感を痛感した。

今後は、能の歴史や現代に伝承されてきた経緯など、また、能の題目や謡や装束などについても取材をする予定である。現段階では、日本語のみのYouTubeチャンネルにアップしている。
■YouTubeアドレス / https://youtu.be/3V1msLDjN2w

能6.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

眼が円相の中心にある「八方にらみ龍」 「龍たずねて―」シリーズⅤ ―妙心寺― [文化想造塾【逸品殿堂】]

妙心寺は、1342年に創建された、京都市右京区花園にある臨済宗妙心寺派大本山。日本にある臨済宗寺院約6,000か寺のうち、約3,500か寺を妙心寺派で占め、塔頭は40数か院に及ぶ大寺院である。前回紹介した大徳寺と同様に勅使門から法堂まで南北に一直線に並ぶ建築様式で、禅寺特有の修行を重んじる厳しい禅風の雰囲気が伝わってくる。
妙心寺3.jpg

他の禅寺大本山同様に天井に龍が描かれている。この龍は、大徳寺の雲龍図を描いた狩野探幽の55歳のときの龍である。大徳寺の龍を描いたのが35歳、20年後の円熟した探幽が8年の歳月をかけ描き上げたとされている。板を鏡のように平滑に張ってある天井に、直径12mの円相の中心に龍の眼を描いている。立つ位置、見る角度によって、龍の表情や動きが変化するように見えるから不思議である。通称「八方にらみの龍」といわれている。
妙心寺 龍.jpg

各寺院の雲龍図は絵師によって、また各寺院の歴史や謂れによっても異なるようだ。ご本尊を守護する龍神には変わりないが、妙心寺の龍は眼が中心にあるので広い視野が見通せるようだ。それぞれの龍を楽しんでみてください。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

文化の宝庫、大徳寺の「鳴き龍」もその一つ。 「龍をたずねて―」シリーズⅣ -大徳寺― [文化想造塾【逸品殿堂】]

文化の宝庫、大徳寺の「鳴き龍」もその一つ。
「龍をたずねて―」シリーズⅣ -大徳寺―

大徳寺は歴史文化の宝庫と言われている。1325年に創建され、釈迦如来を本尊とし700年近くが経つが、応仁の乱ですべてが焼失し荒廃したが、一休宗純禅師(一休さん)の尽力で復興したといわれている。
安土桃山時代には豊臣秀吉が織田信長の葬儀を、ここ大徳寺で営み、信長の菩提を弔うために総見院を建立。戦国時代の波に大きくかかわったお寺である。貴族、大名、承認、文化人等の幅広い保護をうけ栄えていった。とくに大徳寺は茶の湯の世界にも縁が深く、千利休や小堀遠州をはじめとする多くの茶人が同寺とかかわっていた。
大徳氏1.jpg

大徳寺本坊は、中国禅宗の建築様式が特徴である。南から勅使門、三門、仏殿、法堂が一直線に並んでいる。それらの奥に庫裡と方丈がある。(ちなみに南禅寺は西から一直線)
方丈建築は通常、南側に3室、北側に3室の計6室から構成されるのが一般的であるが、大徳寺は南側に4室、北側に4室の計8室という珍しい造りになっている。
大徳寺2.jpg

その大徳寺には二つの天井画がある。一つは釈迦如来像が鎮座されている仏殿の天井に。しかし、その天井画はほぼ剥がれ落ちて見えない状態である。関係者に聞くと、「飛天」が描かれていたという。そう聞いて改めて見ると、そうかなと思える。天から釈迦如来を守り続けているというなら、飛天と納得する。いつの日か仏殿に美しい飛天図が天井を彩るなら、本尊もさぞかし喜ばれることだろう。
飛天図.jpg
飛天図1.jpg
3飛天図.jpg

さて、本題の龍はというと法堂の天井に描かれている。妙心寺同様に狩野探幽が35歳の時に描いた雲龍図だといわれている。天井がゆるいドーム状なっているので、地面の敷瓦の上で手を叩くと、天井の龍も共鳴しズウゥ~ンという音が堂内に響く。そのため「鳴き龍」と呼ばれている。
寺院を訪れると、日常にないいろんなものが見えてくる。寺院を通して、日本の歴史、そしてその時代の文化や人。さらにその証を観ることができる。
大徳寺龍.JPG

「龍をたずねてー」は続く。次回は妙心寺。


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

建仁寺の阿吽の龍の迫力に圧倒される 「龍をたずねて―Ⅱ」 -建仁寺- [文化想造塾【逸品殿堂】]

私が、京都の寺院の中で、訪ねた回数が一番多いのが建仁寺のように思う。それは、なんと言っても「龍」の絵に魅せられたことが大きい。5年前に完成した法堂の天井画の「双龍図」はもちろんだが、方丈の襖に描かれた「雲龍図」は、観る者を威圧する迫力がある。

襖八面に対峙する阿吽二形の双龍図は、江戸時代初期に活躍した絵師 海北友松(かいほうゆうしょう)の渾身の作品として生き続けている。(本物は京都国立博物館に所蔵され、建仁寺の方丈の襖絵は高精密複製画ではあるが、本物を体感できるほどのもの/綴プロジェクトより)。黒雲の中から姿を現した阿吽の龍が向き合い、視線をぶつけあう姿には計り知れないエネルギーを感じる。

建仁寺龍2.jpg

建仁寺龍1.jpg

そして法堂の天井画の龍は、2002年に建仁寺創建800年を記念し、日本画家の小泉淳作画伯によって2年掛かりで描かれた大作である。この天井画も双龍図で、釈迦如来像を守るために天井から睨みをきかせ、また法を説く修行の場で天空から見守り、そして法の雨を降らし修行僧に力を授けるための神仏として天井で舞っているという。

いずれの双龍画図を観に訪れた人は、目に見えないエネルギーを享受しているような気がする。だからまた訪ねてみたくなるのかもしれない。
建仁寺龍3.jpg
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

ロングセラーの家庭薬、いまも。 [文化想造塾【逸品殿堂】]

用事があって大阪 船場へ。久しぶりに道修町の少彦名神社にお詣り。神社会館の3階にある「くすりの道修町資料館」を覗いた。
道修町といえば「くすり」。江戸時代は薬の材料が大阪に集まり、それを加工し全国各地へ運ばれていた拠点だった。
その中心地だった道修町で、いまの大手薬品メーカーのほとんどがスタートした。
その中で、100年以上も続くロングセラーの家庭薬がいくつかある。時代とともに進化しながらも昔の名残を感じさせてくれる薬が展示されてあった。
征露丸(いまは正露丸)をはじめ改源、ノーシン、ロート目薬、大学目薬、メンソレータムなど、また香取線香の金鳥の渦巻や仁丹などなど懐かしいのものばかり。
ロングセラーを続ける商品にはいろんな理由がある。効能や効果はもちろんだが、どのものを見ても袋やパッケージ、さらに容器などのデザイン性が極めて優れている。
表面的なデザイン性からも感じられるのが、製造元のすべてにおいてデザイン的思考能力が高さである。
伝統を守りながら新しいモノを取り入れ変化させる能力の高さが伺える。

IMG_1378.jpg

IMG_1380.jpg

IMG_1381.jpg

IMG_1373.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

高野山の老杉がいまは東光寺で延命魂として [文化想造塾【逸品殿堂】]

門戸厄神の境内に巨大な樹木の根っこが展示されている。「延命塊」といわれるものである。
高野山奥の院、弘法大師御廟近くの参道に、高さ60m、樹齢800年の老杉があった。生命をまっとうした杉根を高野山金剛峯寺よりこの門戸厄神東光寺へお下げされたものである。
この木は永い間、多くの人々の祈りと神仏の魂がこもった霊木といわれ、延命や病気平癒にご利益があるとされている。
見ての通り、数々の年輪の流線が永い年月を感じさせる。いまも神仏の魂がやどり救いの霊木として生き続けている。

IMG_1214.jpg

IMG_1220.jpg

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

天井画はおそらく飛天図、蘇れば・・・ [文化想造塾【逸品殿堂】]

勅使門、三門、そして仏殿、法堂と並ぶ。その中の仏殿を覗き手を合わせた。本尊の釈迦如来坐像が祀られている。結跏趺坐され、悟りを開いて深い瞑想に入った状態である。
天井を見上げると絵が描かれてあった痕跡があるが、かなり剥がれ落ちている。雲の痕跡から雲龍図かと想像したがどうも違うようだ。尋ねると「飛天」という答えが返ってきた。
飛天は、諸仏の周囲を飛行遊泳し礼賛する天人であることから、天井画の題材になってもおかしくない。
法堂の雲龍図に対し、いつの日か仏殿に美しい飛天図が再び仏殿の天井を彩るならご本尊もさぞかし喜ばれることだろう。

IMG_1061.jpg

IMG_1063.jpg

IMG_1135.JPG
飛天図はネットより転載したもの。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

絵師「等伯」を知る [文化想造塾【逸品殿堂】]

「等伯」を読み終えての感想は、過去にない、心を鷲づかみされる衝撃的なものだった。
小説家 安倍龍太郎氏の「長谷川等伯」は、同氏の広範な知識と厚い情報量による博覧強記による絵師「等伯」が描き尽くされていた。
文化や歴史に興味をもつ人間にはたまらない小説だった。「等伯」を通し、当時の政や歴史文化、宗教そして他の絵師などを、いままでない側面から感じられたのは非常に面白かった。
また、戦国の動乱期に「狩野派」と「長谷川派」がしのぎを削り、秀吉、三成、公家、利休、そして高僧たちを巻き込んでの闘いは見応えのあるものだった。

IMG_0939.jpg

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート

TAKUMI PROJECT 、匠の技を未来へつなぐ [文化想造塾【逸品殿堂】]

「TAKUMI CRAFT CONNECTION[>]?KYOTO by LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」というクラフトの祭典を見に行ってきた。
総合監修に小山薫堂氏、展示企画プロデューサーに建築家の隈研吾氏、展示構成に錚々たるアーティストが名を連ね、情報発信力を強め盛り上げを狙った一大イベントの様相になっていた。

京都新聞ビル地下1階の会場は、全国の若き匠たち150人の作品が一堂に並ぶ"JAPAN connection"。そして平安神宮 額殿では5人のトップクリエイターと若き匠のコラボ展、そして京都の文化創造の担い手と5人の若き匠のコラボが建仁寺両足院で週末の3日間3会場で開催された。

京都新聞ビルへ行き、印刷工場だった地下のどデカイ空間に全国からの匠150人の工芸品が並んでいた。この企画構成には驚かされた。入口でペンライトを渡され薄暗い足元を照らす役割意外に作品を鑑賞するためのものと理解した。
照明といえば、展示台の中にライトがあるのみ。上からのスポットもない。この不思議な演出には見る側、作品を手がけた匠にとって戸惑いは隠せなかったものの新しい試みに圧倒された。

匠はほとんど30、40代のみなさんで、地域の伝統産業をクリエイターとしての感性や技で作品をつくり全国に発信している。
その中で手作りランドセルはキット販売になっている。購入者が最後に手縫いしてプレゼントするというものだった。また草履下駄などは興味を惹く作品もあった。

IMG_0625.jpg

IMG_0628.jpg

IMG_0622.jpg

IMG_0637.jpg
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:アート
前の10件 | - 文化想造塾【逸品殿堂】 ブログトップ