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鉄舟の「ふじのやま」が教えたもの。 [おやじ感想文シリーズ]

懐かしい雑誌を手にした。「PHP」。
1947年に創刊された本である。数十年前は多くのサラリーマンや経営者の愛読書として人気を博していた雑誌である。PHP研究所の機関誌として発刊されたもの。いまの時代、多く人間啓発書やビジネス書が氾濫しているので、その陰は薄くなっている。

そのPHPを昨日、勤務先の学園長から、この雑誌を知っていますか、と見せていただいた。2009年発行のものだった。少し懐かしさもあってペラペラと頁を捲くると、改めて心に染みる内容のものが掲載されていた。

それは「鉄舟の掛軸」という頁。エッセイスト・山川静夫さん(元NHKアナウンサー)が " 父のこと 母のこと " の副題で書かれていた。
山川さんの実家は静岡の神社。お父さんが骨董好きでいろんな掛軸を保存されていた。その中に、山岡鉄舟の「ふじのやま」という掛軸があった。その墨画に賛が添えられていた。「はれてよし、くもりてよし、ふじのやま、もとのすがたは、かはらざりけり」と。

ある時、山川少年がお父さんにたずねた。
「あの鉄舟の軸はホンモノなの?」
お父さんは苦笑いしながら「ニセモノかもしれんな。でもそんなことはどうでもいい。わしはすきだよ、はれてよし、くもりてよし、だろう」。真贋はつきとめられなくても、自分が気に入っていればそれでいいではないか、ということである。

最後に、山川さんはこう結んでいる。
どうも日本人の価値観や美意識は他人まかせが多い。自分自身の評価はどこへいってしまったのか。問題は " 自分の尺度 " だ。審美眼を高めていく必要がある。それを教えてくれたのが、鉄舟の「ふじのやま」と父のことばだった。

[おやじ感想文シリーズ]より

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