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いまに継承される祇園の「手打」の儀式 【八坂神社新嘗祭Ⅱ】 [伝統文化]

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「手打」と聞けば、誰しも「そば」を想像するが、今回は、そばの話ではない。
400年以上前の京都で行われていた歌舞伎役者と劇場との間の契約締結のための調印式のことが手打といわれていた。その手打が少し形を変え、いまも祇園のしきたりの一つとして脈々と継承されている。

いまに伝わる「手打」は、京都の限られた地域、つまり祇園という場所で慶事の伝統的儀式として長い間続けられている。江戸時代に入り、歌舞伎の顔見世の招き看板も上がり、歌舞伎役者などが芝居小屋入りするのを迎えて、馴染みの人々が盛大に「手打」を行っていた。
これが、いまの祇園の芸妓さんの「手打」の元になっている。芸妓さんの「手打」は舞ではなく儀式のひとつとして継承されている。 

その「手打式」は十数人の芸妓さんが黒紋付姿に、笹りんどうの紋の手ぬぐいを細長くたたんで頭にのせ、紫檀の拍子木を打ち鳴らしながら舞台上がっていく。その中に「木頭」とよばれる人が音頭をとり、それにあわせ芸妓さんたちが唄を歌いながら登場する華やかで雅やかな儀式である。

このたびの「八坂神社新嘗祭」の奉納では、井上八千代さんの倭人奉納の後に手打式が行われた。黒紋付姿の芸妓さんの一糸乱れない、舞殿までの歩く姿がひときわ目立った。そして柏子木の音が騒めく境内を一瞬に静寂の世界へいざなった。


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八坂神社の新嘗祭で舞う井上八千代氏の存在感 【八坂神社新嘗祭の奉納舞Ⅰ】 [伝統文化]

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一昨日の23日は、八坂神社「新嘗祭(にいなめさい)」が八坂神社本殿で執り行われた。
新嘗祭は、神前に収穫された新穀を供え、その年の豊穣に感謝し、翌年の豊穣を祈願する儀式である。
今年は、令和2年12月、八坂神社本殿が国宝に、社殿・建築物26棟が重要文化財に指定され、その奉祝行事の締めくくりとしての新嘗祭だった。

儀式は、午前10時より本殿で執り行われ、11時より、人間国宝で京舞井上流の家元 井上八千代氏による「倭人」の奉納が舞殿で行われた。
京舞井上流は、「都をどり」の流儀として知られている流派で、現在の井上八千代氏が五世家元になる。200年以上続く日本の伝統芸能である日本舞踊の京舞井上流として現在に受け継がれている。

その井上八千代氏の舞を見るのは初めてだったが、まったくの門外漢の私にも伝わる風格たるや、京舞井上流のみならず、日本舞踊を伝承し、次の時代に継いでいく大きな存在感ある姿に見えた。


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作者の想いが50グラムの立体造形のなかに 【京菓子展2022より】 [伝統文化]

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11月1日~15日まで京都・有斐斎弘道館などで開催された「京菓子展2022」は、2015年にはじまり今年で8回目。第一回目のテーマが「琳派」、そして「蕪村と若冲」、「源氏物語」、「小倉百人一首」、「万葉集」、「禅ZEN」、「徒然草」と続き、そして今年が「枕草子」。京都とゆかりの深いものを題材に、創意工夫をこらした京菓子と茶席菓子の展覧会。

今年のテーマである「枕草子」は、ご存じのとおり平安時代に清少納言が四季折々の美しい情景を随筆にしたものである。永年、受け継がれてきた日本のよき文化や暮らしをいまのこの時代に、そして未来へと、よき姿で伝え継いでいく橋渡しのような京菓子展覧会だった。

京菓子は、作者の想いを50グラムの立体造形の中に「ものがたり」にして完成させる芸術である。眺めそして食し、作者が創造したものがたりを読み解いていく、文化の香りに包まれた結晶である。
今回、展覧された作品は、全国からプロアマ問わず応募された593点の作品の中から54点が選ばれ、本会場である有斐斎弘道館に37点、特別会場の旧三井家下鴨別邸に17点が並んだ。その中から京菓子デザイン部門では5作品、また茶席菓子実作部門では10作品が受賞した。

受賞作品は次回に紹介するが、今回は、会場の雰囲気を味わっていただく写真をアップした。


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         「曙」(枕草子より) 植村健士 作

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お菓子を支える脇役の景色 【京菓子展2022】 [伝統文化]

「京菓子展2022」が15日で終わったが、次年につながる残景を随所に見ることができた。今年は「枕草子」がテーマに京菓子のみどころを存分に見せてくれた。来年は、どんなテーマで、どんなヒロインたちが生まれるのか楽しみだ。そのヒロインたちをより美しくより美味しく魅せる脇役にも心ひかれる。今回もそうだった、きっと次回も。

お菓子の紹介はシリーズの最後になってしまうが、このシリーズ三弾も演出の脇侍役を景色として紹介したいと思う。あくまでも私の視点で選んだ景なので不足もあろうが、それはお許しを。


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         ちょっと不思議な掛軸

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           皆川淇園の屏風

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            凌風香満願と書かれた屏風

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             お庭の行燈が灯る

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時間から美を切りとった言葉、 “春はあけぼの” 【京菓子展20229lより】 [伝統文化]

春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。

そう、枕草子の冒頭の文章である。学校で習ったはずだが、はるか遠いむかしを振り返っても、その記憶は乏しい。しかしながら、いまにして読めば、“春はあけぼの” などのような言葉は、時間から美を切り取って表現しているかのように心にしみいる。

その枕草子をテーマにした「京菓子展2022」に伺った折に、お菓子が展覧されている部屋の床の間にかのような気になるお軸二幅が掛けられてあったのが目に入った。
想像を膨らませると、清少納言を思わせる平安貴族の女性が、お隣の部屋のにぎわいを見ようと御簾を上げている姿に見えてくる。二幅ある中の一幅は、内側から、そしてもう一幅は外から御簾を上げている絵である。想像を掻き立てる不思議な絵だが、その御簾は枕草子の世界と京菓子展をつなげるトビラのように見えた。


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天井に龍が舞う 想像の超える世界が見えてくる 【あの一枚 展 天井画】 [伝統文化]

禅宗系の大本山を訪ねる楽しみは、襖絵や天井画を見ることである。京都の五山のなかでも妙心寺や大徳寺、相国寺、そして建仁寺の天井画は荘厳な宇宙のような景色に見えてくる。

龍は、ご存じ仏教を守護する八部衆の一つで龍衆といわれ、禅寺の本山の多くでは、法堂(はっとう)の天井に龍が画かれている。妙心寺、大徳寺は狩野探幽、相国寺は狩野光信など名刹が画き、そして最近では、小泉淳作が画いた建仁寺の天井画は円相ではないが、天井全面に双龍が舞っている。

大徳寺には二つの天井画がある。一つは釈迦如来像が鎮座されている仏殿の天井に。しかしながら、その天井画はほぼ剥がれ落ちて見えない状態である。関係者に聞くと、「飛天」が描かれていたという。そう聞いて改めて見ると、そうかなと思える。天から釈迦如来を守り続けているというなら、飛天なのだろう。いつの日か仏殿に美しい飛天図が天井を彩るなら、本尊もさぞかし喜ばれるはずである。

もう一つは、法堂の天井に描かれている。妙心寺同様に狩野探幽が35歳の時に描いた雲龍図だといわれている。天井がゆるいドーム状なっているので、地面の敷瓦の上で手を叩くと、天井の龍も共鳴しズウゥ~ンという音が堂内に響く。そのため「鳴き龍」と呼ばれている。

寺院を訪れると、日常にないいろんなものが見えてくる。寺院を通して、日本の歴史、そしてその時代の文化や人、さらにそれらの証を観ることができる。
今回の「あの一枚」展シリーズでは、モノトーンで表現している。想像の領域を超えた世界を楽しむのも乙なものかもしれない、と思い・・。


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            狩野探幽が描いた大徳寺法堂の「泣き龍」


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              大徳寺仏殿のはがれた天井画


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             狩野光信が描いた相国寺の雲龍図


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             小泉淳作が描いた建仁寺の双龍図
             

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京の路地裏の力強さ 【京の細道シリーズ】 [伝統文化]

五条大橋から高瀬川の西側の路地裏を四条まで歩いた。
半世紀以上経っても変わらぬ懐かしい建物が目に留まった。
江戸時代の風情を感じさせる料理旅館、
路地裏にひっそり佇む欧風調の喫茶店、
また、細い路地を挟んで商いを営む豆腐屋と旅館。
それぞれの店々がいまも変わらずそのままで商いが存続している。
京都路地裏の力強さを見たようだ。


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「色あざやかさ」が浮き彫り 【あの一枚展 紅葉Ⅱ】 [伝統文化]

昨日に引き続き、思い出される「紅葉」の一枚一枚をピックアップしてみた。
紅葉Ⅱでは、色づく葉にスポットあてたカットを拾い上げた。
陽射しや水面など、他の色とのコントラストで「あざやかさ」が浮き彫りに。
これらの一枚で、その時をほんの少し振り返るのも、実に楽しい~


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秋寒し木々の黄紅どんな色 【あの一枚展 紅葉Ⅰ】 [伝統文化]

寒露を過ぎると、木々が少しずつ色づきはじめ秋の装いになっていく。
木々の葉が黄色に、紅色に染まるころの景色は華やいでみえる。
変わることなく移ろう季節の情景ではあるが、
今年は、また違った、心に沁みる一枚になるやもしれない。


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                   森閑- silence 

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                   吻合- anastomosis

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                   錦秋- kinshu

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                   薄靄- thin haze

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                   陽光- sunlight

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                   対照- contrast

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                   閑寂- quiet


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大阪・十三を本拠地に、大阪人の胃袋をつかむ「みたらし団子」 【喜八州総本舗】 [伝統文化]

「御手洗」と書いて、通常は「おてあらい」と読むが、一方では「みたらい」と読む。その昔、歴史的には「みたらし」と呼んでいた。その「みたらし」が、いまも名称として使われているのが馴染の団子の「みたらし団子」である。
神社の近くに流れている川を通称「御手洗川(みたらしがわ)」という。特定の川の名称ではなく、神社の参拝者が手を洗ったり口をすすいだりする川のこと。その御手洗川で有名なのが京都・下鴨神社。いまでも続いている夏の御手洗祭りで販売されていた団子を「みたらし団子」と呼ぶようになった。


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京都のみたらし団子は有名だが、絶大な人気を誇るみたらし団子が大阪にある。全国に名を馳せた、おっちゃん、お兄ちゃんの夜の街(半世紀前のこと。いまはビックリするほどにきれいな街に変貌)、十三にある。阪急十三駅の西改札を出て50mほどいったところに、それは見事な「喜八州(きやす)」の看板が掲げられている。いつ通っても行列が目を惹く「喜八州総本舗本店」である。

喜八洲という屋号は、創業時(昭和23年創業)に「菓子業により八洲(日本中)の皆様に、大いに喜んで頂こう」という意味合いで、名付けられたようだ。「最高の材料を使い、手頃なお値段で手作りの味を甘党のお客様に!」をモットーに名物の酒饅頭をはじめ、人気のみたらし団子、ジャンボサイズのきんつば・花ぼた餅・焼き餅などの浅生菓子から、力士最中・初霜・栗饅頭・三笠などの贈答用の和菓子まで、およそ40種類以上の和菓子を取り揃えている。大阪人の味に対応するために、全商品を本社の工場で製造しているのもこだわりひとつようだ。

商品の中でも、やはり人気一番の「みたらし団子」を求めて店頭に並ぶ。1本(108円)から買えるので串を片手に小腹の足しにという若者も多いが、5本、10本入りが飛ぶように売れる。私も、せっかくなので並び、たれ付け、焼き具合、スピード化された包装のそれぞれのテクニックを見ながら待った。
より多くのタレがからみ、団子に旨味が凝縮されるといわれている俵型の「きやすのみたらし団子」。老若男女を問わず、だれもがその味を楽しめる人気商品。甘いたれとモチモチのお餅が絶妙に絡んだみたらし団子は、味にうるさい大阪人の胃袋を捉えている。


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その味はというと、餅粉と米粉を絶妙なバランスで配合し蒸し上げた団子を、注文してから強い直火で炙る。お姉さんが「あぶり加減は?」と客一人一人に聞いてくれる。ステーキと同じように焦げ目三段階の炙り方である。「焦げ目少なく・ふつう・焦げ目多く」に分かれている。
私はふつうといったが、それでも結構な焦げ目がついている。私の後ろのオジサンは「焦げ目たっぷり」と。販売員さんは「少し苦くなるかもしれませんが・・」という返事に、オジサンは「苦いのがいいのや!」と語気を強めて返事していた。たかがみたらし団子、されど・・・である。
香ばしく焦げ目が付いたら、自社特性のタレの中をくぐらせる。タレは北海道厚岸産の上質昆布でダシをとり、香川県産たまり醤油と白ざら糖を使った喜八州独自の特別仕立。また、団子の形が俵(円筒状)なのは炙った時に焦げ目がつきやすく、また、タレの絡みをよくするためとのことだった。


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歴史をつくるお店には、店のこだわりにお客さんが信頼を寄せている。味はもちろんそうだが、お店のしきたりや習慣にもなじんでいる。それに大阪人は、客がお店をつくり守ってやっているという何とも大阪らしい下町風土あふれる上目線が働いているようにも思う。
両者の歯車が絶妙にからまり動いているのが大阪の商いかもしれない。十三を本拠地に商売を育む喜八州総本舗の本旨が見えてくるようだった。


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