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南禅寺の庭園、小堀遠州作庭「虎の子渡しの庭」の伝説。 [文化想造塾<社寺>]

ご存じの方も多いかと思うが、京都には七つの不思議な伝説がある。その一つに「南禅寺の七不思議」があり、その言い伝えは興味深いものばかりである。七不思議の一つに、江戸時代の名作庭家、小堀遠州(こぼりえんしゅう)作の方丈庭園「虎の子渡しの庭」というちょっと面白い言い伝えが残っている。

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大方丈の南側に広がる白砂が敷かれた細長い矩形(長方形)の庭。江戸時代初期の代表的な枯山水庭園として、国の名勝に指定されている。方丈庭園は、白砂と築地壁(ついじべい/粘土を固めた壁)に面して置かれた大小6つの石が見事なバランスを奏でている。のこの庭は川を渡る虎の親子に見立て、中国の故事に倣って「虎の子渡しの庭」と呼ばれている。その中国の故事とは…。

母虎とその3匹の子虎は川の対岸に渡ろうとしていた。この3匹の子虎のうちの1匹はとても獰猛で、母虎が注意して見ていないと、他の2匹を食い殺してしまう恐れがある。しかし、対岸へは一匹ずつしか連れて行けない。2匹が食べられてしまうことなく、無事に3匹を対岸に渡すにはどうすれば良いかと母虎は考え、そして名案を思い付いた。
まず、獰猛な子虎を連れて川を渡り、そして、母虎だけ戻って、次の1匹を連れて渡った。対岸に着いたら、獰猛な子虎を連れて再び戻り、獰猛な子虎を残して、もう1匹の子虎を連れて渡った。最後に母虎だけが戻って、獰猛な子虎を連れて渡った。これで、母虎と3匹の子虎は無事に川を渡ることが出来た。

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この故事には、どのような子であっても親は愛情を均しく注がなければならないという教訓が込められているようだ。小堀遠州は、この故事を知った上で作庭したかどうかはわからないが、「虎の子渡しの庭」という名がついていることで、この故事との関係性は深いように思われる。そう思い浮かべながら庭を眺めると優しい気持ちになれるかもしれない。やはり禅寺の姿が庭にも表れている。                     
ちなみに、同じ禅寺である龍安寺の石庭も「虎の子渡しの庭」と呼ばれている。


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