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「菊水鉾」の4面の幕、狩野岑信の七福神絵巻原画を川島織物が製作 [伝統文化]

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前回紹介した「白楽天山」に続いて、祇園祭Ⅱでは「菊水鉾」を紹介する。この菊水鉾は5年前に鉾再建60周年ということで、懸装品の前掛け、後掛け、胴掛けを一新することになり4年がかりで完成し4面すべてが揃いお披露目となった。
その懸装品の新しい絵柄として登場したのが「七福神」。この七福神と菊水鉾との結びつきは、菊水鉾を有する地域は現在、「菊水鉾町」という地名だが、古くは「夷三郎町」といい、町に夷社があったことから七福神を使うことになったようだ。

これに因んで、江戸前期に御用絵師として活躍していた狩野岑信(かのうみねのぶ)が描いた「七福神絵巻」(板橋区立美術館蔵)の原画をもとに4枚の幕に七福神が表現されることに。

取材の際に前掛け、後掛け、胴掛けを見て、それぞれの神様を確認したが、ゑびす神が見当たらない。七つの神様が揃ってその地域や菊水鉾が守られ末永く繁栄していくものである。それなのに肝心の「ゑびす様」がいないのに気づき、保存会の長老に尋ねると、長老は「ほら、あそこに」と前掛けの上の方を指で示した。「どこに?」と聞き返すと長老は、半ばあきらめ口調で「わからんやろーなぁ!」と。
こんなやり取りがあったあと、見てのとおり、前掛けは小槌を振る大黒天だけのように見えるが、実は、左上の舟と烏帽子、釣った鯛が魚かごから見えている。あの鯛がゑびす様だとはなかなか想像しにくい。
このように、持ち物などで、その人物を想起させる表現方法「留守文様」という。この手法をつかった、なんとユニークな前掛けとなっていた。


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留守文様で表現されているゑびす様

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左上の鯛がゑびす様


左面の胴掛けは、寿老人と福禄寿が描かれ、近くで見ると絵画そのままに濃淡や筆遣いなどが再現されている。右胴掛けには毘沙門天と弁財天。そして後掛けの見送りは布袋尊である。4枚に共通して、これらの七福神を囲む枠は、菊をあしらったデザインを施し、漁業の神様であるゑびす神を表す波文とあわせ菊水の意味を込めている。


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左面の胴掛けには寿老人と福禄寿

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右面には毘沙門天と弁財天

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後掛けは布袋尊


これら4面は約500色の色糸が染め出しされ、綴織技法で4年の歳月をかけて製作された逸品である。保存会や板橋区立美術館、そして実際に製作した京都の織物メーカー、川島織物の最高のテクノロジーが融合しできたもの。未来に向けてさらに伝統が築かれ、後世に受け継がれていくのを目のあたりにした。


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天井には龍

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車輪には菊の御紋

山鉾巡行を見る機会があれば、ぜひ菊水鉾にもご注目ください!


リポート&写真/ 渡邉雄二 前掛けの写真の一部は川島織物セルコン「KAWASHIMA stories」より

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

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